三叉神経痛は、顔面の感覚(触覚・痛覚・温度覚)を担う三叉神経が刺激されることで生じる顔面への突発的・電撃的な激痛を特徴とする疾患です。
「電気が走るような」「刃物で刺されるような」と表現される痛みが、顔の片側に数秒〜数十秒間、繰り返し発作的に起こります。世界で最も強い痛みの一つと言われ、自殺衝動を伴うほど重篤になることもあります。
有病率は人口10万人あたり約12〜28人とされ、50歳以上・女性に多く見られます。
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三叉神経は、顔面の感覚を脳に伝える脳神経の第V番(第5脳神経)です。顔の3つの領域(額・頬・顎)に分布するため「三叉」と呼ばれます。
三叉神経が脳から出る根元(神経根)に、動脈が異常に接触・圧迫することで神経が傷つき、電気的な誤作動(異常放電)が起こります。これが電撃的な痛み発作の原因です。
免疫疾患により脳内の神経の絶縁体(ミエリン鞘)が傷つき、三叉神経に異常放電が起きる場合。若い女性に多い。
各種検査で原因のわからないもの。
わずかな刺激で発作が誘発されることが特徴です。
つまり、会話や食事、歯磨き、洗顔などの日常生活への影響が大きい痛みです。
⚠️ 非典型例・除外すべき疾患:歯痛・副鼻腔炎・顎関節症・非定型顔面痛・帯状疱疹・群発頭痛などとの鑑別が重要です。歯が原因でないのに抜歯してしまうケースも散見されるため、専門医への受診が大切です。
薬の効果が薄れてきた・副作用が強い場合は、ペインクリニックや脳神経外科での専門的治療を検討します。
三叉神経が集まる「ガッセル神経節(半月神経節)」に局所麻酔薬・ステロイドを注射します。X線透視下で頭蓋底の小さな穴(卵円孔:らんえんこう)から針を進める精密な手技で、即効性が高く、薬物療法が効かない場合の重要な選択肢です。
しかし、卵円孔から中枢は頭蓋内で脳実質や血管があり、出血した場合くも膜下出血などの重篤な合併症につながる可能性がある。
眼窩上神経(眼神経の末梢枝)、眼窩下神経(上顎神経の末梢枝)・上顎神経、オトガイ神経(下顎神経の末梢枝)・下顎神経の周囲に局所麻酔薬を注射します。ガッセル神経節ブロックより簡便で、外来での繰り返し実施が可能です。上顎神経や下顎神経はより深層のブロックのため出血の危険性があります。
ガッセル神経節に針を刺し、高周波電流で熱を加えて痛みを伝える神経線維を選択的にブロックします。長期間(数ヶ月〜数年:個人差が大きい)の除痛効果が期待できます。感覚鈍麻(顔のしびれ)が残ることがあります。
神経血管圧迫が原因の場合、開頭手術により圧迫している血管を三叉神経から離す「微小血管減圧術(びしょうけっかんげんあくじゅつ:MVD)」が根本的治療として最も効果が高いとされています。当クリニックでは必要に応じて脳神経外科専門医と連携します。
MRI・CTが必要な場合は連携施設へ
カルバマゼピンの用量調整・副作用管理
末梢神経ブロック→ガッセル神経節ブロック
| 参考文献: | Cruccu G et al. Eur J Neurol 2008 / Gronseth G et al. Neurology 2008 / 日本ペインクリニック学会 治療指針2023 / Zakrzewska JM. BMJ 2013 / Sindou M et al. Neurosurgery 2006 ほか |
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非定型顔面痛(ひていけいがんめんつう)とは、顔面・口腔内・顎に持続する痛みがあるにもかかわらず、歯・顎骨・神経・血管など、通常の検査では明らかな原因が見つからない慢性の顔面痛です。
国際頭痛学会(ICHD-3)では「持続性特発性顔面痛(PIFP:Persistent Idiopathic Facial Pain)」と正式に定義されています。「原因不明の顔の痛み」として長年悩まれる方が多く、複数の診療科を転々とされるケースも少なくありません。
⚠️ 非定型顔面痛は「検査で異常がない」からといって「気のせい・心の病気」ではありません。神経の機能異常・中枢感作・心理的因子が複雑に絡み合う実在の疾患です。適切な診断と多角的な治療が重要です。
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非定型顔面痛の原因はまだ十分に解明されていませんが、以下の複数の要因が関与すると考えられています。
歯科処置(抜歯・根管治療など)や外傷をきっかけに、三叉神経系・脊髄後角・脳が過敏化する「中枢感作」が起こり、実際の組織損傷がなくても痛み信号が送り続けられると考えられています。
うつ病・不安障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)・強いストレスが発症・遷延(痛みが長引くこと)に深く関与します。実際、非定型顔面痛患者の多くにうつ・不安の合併が認められます。
歯科処置・口腔外科手術・外傷による三叉神経の細い枝の微細な損傷が、神経因性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)を引き起こす可能性があります。通常の検査では検出されない損傷です。
非定型顔面痛と三叉神経痛は混同されやすいですが、大きく異なります。
首の付け根の星状神経節への注射です。顔面の交感神経の過活動を抑制・血流を改善し、疼痛の悪循環を断ち切ります。三叉神経系への間接的な作用も期待され、顔面痛全般に有用です。繰り返しの施術で自律神経を整え、不眠・不安・のぼせなど随伴症状の改善も期待できます。
痛みのある領域を支配する三叉神経の末梢枝(眼窩上神経・眼窩下神経・オトガイ神経など)に局所麻酔薬を注射します。診断的ブロック(注射で痛みが消えれば、その神経が原因と判断)としても活用できます。
三環系抗うつ薬・SNRI・プレガバリンなどを、副作用を管理しながら適切な用量に調整します。「痛みの薬」としての抗うつ薬の役割を患者さんに丁寧に説明します(「うつ病の薬ではありません」)。
必要に応じて歯科・口腔外科・耳鼻科・精神科・心療内科と連携し、原因の見落としをなくしつつ、心理的要因にも対応する包括的な治療を行います。
器質的疾患の除外・既往の検査結果の確認
三叉神経末梢枝ブロックで痛みの由来を評価
抗うつ薬・プレガバリン等を少量から開始
| 参考文献: | Headache Classification Committee, ICHD-3 2018 / Svensson P. J Oral Rehabil 2016 / List T, Jensen RH. Cephalalgia 2017 / Türp JC, Gobetti JP. J Am Dent Assoc 1996 / 日本頭痛学会 ほか |
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抜歯(ばっし)後には通常、数日間の痛みと腫れが生じますが、多くの場合は1週間ほどで落ち着きます。しかし一部の方では、痛みが予想以上に長く・強く続いたり、一度引いた後に再び強くなる「ドライソケット(乾燥性歯槽骨炎)」や、数週間〜数か月以上続く「抜歯後慢性疼痛」が生じることがあります。
「抜歯したのにずっと痛い」「歯科では異常ないと言われた」という場合、ペインクリニックの専門的な評価と治療が有効な場合があります。
| 関連キーワード: | ドライソケット(乾燥性歯槽骨炎)、歯槽骨(しそうこつ)、血餅(けっぺい)、抜歯後疼痛、神経損傷、下歯槽神経、オトガイ神経、神経因性疼痛、三叉神経末梢枝ブロック、局所麻酔薬、術後慢性疼痛(CPSP) |
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抜歯後24〜48時間がピークで、その後1週間以内に改善します。鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)と適切な口腔ケアで管理します。
抜歯後2〜4日頃から痛みが再び強くなる・悪化するのが特徴です。通常、抜歯後の傷口(歯槽窩:しそうか)には血餅(けっぺい:血の塊)ができて保護しますが、何らかの理由でこの血餅が剥がれてしまい、骨が直接空気・食べ物にさらされることで激しい痛みが生じます。
下顎(かがく)の親知らず抜歯の際、歯の根に近い位置にある「下歯槽神経(かしそうしんけい)」や「オトガイ神経」が傷つくことで、口唇・下顎・歯肉のしびれや慢性疼痛が残ることがあります。
抜歯後3か月以上痛みが続く場合、「術後慢性疼痛(CPSP:Chronic Post-Surgical Pain)」の一形態として捉えます。神経損傷・中枢感作・心理的要因が関与します。
痛みの原因となっている神経(下歯槽神経・オトガイ神経・上歯槽神経など)の出口(オトガイ孔・眼窩下孔など)に局所麻酔薬を注射します。急性期の強い痛みを迅速に緩和し、神経の過敏化をリセットする効果があります。
より中枢側の神経幹(三叉神経の第2・3枝)に薬を注射します。広範囲の顎・歯肉・唇の痛みに有効で、診断的ブロックとしても活用します。
交感神経を介した顔面・口腔の血流改善・疼痛緩和を図ります。慢性化した抜歯後疼痛・神経因性の顔面痛に有効です。
抜歯後の神経損傷による慢性疼痛には、プレガバリン・三環系抗うつ薬などの神経障害性疼痛に特化した薬剤を適切に使用します。「歯の痛みだからNSAIDsだけ」という従来の治療から脱却し、神経因性疼痛の観点からアプローチします。
長期間痛みが続くことで不安・うつが生じやすいです。必要に応じて認知行動療法・心理カウンセリングを組み合わせます。
歯科・口腔外科の診察記録の持参をお勧め
プレガバリン・抗うつ薬等
| 参考文献: | Blondeau F, Daniel NG. J Can Dent Assoc 2007(ドライソケット) / Renton T. Prim Dent Care 2010(神経損傷) / Kehlet H et al. Lancet 2006(術後慢性疼痛) / 日本口腔外科学会 / 日本ペインクリニック学会 治療指針2023 ほか |
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