頭痛(片頭痛・緊張型頭痛)
1. 頭痛とは?
頭痛は日本人の約3人に1人が悩む、非常に頻度の高い症状です。中でも「片頭痛(へんずつう)」と「緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)」は、それぞれ全人口の約8%・約20〜30%が罹患しているとされる代表的な慢性頭痛(一次性頭痛)です。
頭痛には大きく分けて「病気が原因ではない一次性頭痛(原発性頭痛)」と「脳腫瘍・くも膜下出血など重篤な病気が原因の二次性頭痛」があります。ペインクリニックでは主に一次性頭痛の診療を行います。
頭痛でクリニックにかかるのは気が引けると思われがちですが、適切な治療がありますので、ご相談ください。頭痛は社会的にも生産性の低下が示されており、治療により生産性の改善も期待できます。
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一次性頭痛の比較(代表例)
- 片頭痛:拍動性(ズキズキ)の強い頭痛。吐き気・光や音への過敏を伴うことが多い。女性に多い(男女比1:3)。片側である必要はありません。
- 緊張型頭痛:頭全体が締めつけられるような鈍い痛み。最も頻度が高い。ストレス・姿勢が主な原因
- 群発頭痛(ぐんぱつずつう):目の奥を刺されるような激しい痛みが毎日同じ時間に出現。男性に多い。比較的まれ
2. 原因・発症メカニズム
片頭痛の原因
片頭痛の発症には複数の機序が関与します。現在は三叉神経血管説が有力で、三叉神経(さんさしんけい)の活性化・炎症性物質の放出・脳血管の拡張が連鎖的に起こるとされています。
主な誘発因子(トリガー)
- ストレス・精神的緊張、またはその解放(週末頭痛)
- 睡眠不足・睡眠過多
- ホルモン変動(月経前後に多い「月経関連片頭痛」)
- 特定の食品(チョコレート・チーズ・赤ワイン・MSG含有食品)
- 光・音・においの強い刺激
- 天候の変化(気圧低下)
- 脱水・空腹
緊張型頭痛の原因
頭・首・肩の筋肉の慢性的な緊張・収縮が主な原因とされています。
- 長時間のデスクワーク・スマートフォン使用による頸部・肩の筋肉疲労
- 不良姿勢(前かがみ・猫背・ストレートネック)
- ストレス・不安・抑うつ
- 睡眠不足・過労
薬物乱用頭痛(MOH)に注意
市販の鎮痛薬(バファリン・ロキソニンなど)を月に10〜15日以上、3か月以上服用し続けると、かえって頭痛が悪化する「薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)」になることがあります。「頭痛がひどいから薬を飲む→さらに頭痛が増える」という悪循環です。
3. 症状の特徴
片頭痛の特徴的な症状
前兆
約20〜30%の片頭痛患者さんに、頭痛の前(30分〜1時間前)に「前兆」が現れます。
- ギザギザした光(閃輝暗点:せんきあんてん)が見える
- 視野の一部が欠ける・見えにくくなる
- 手・口周りのしびれ
- 言葉が出にくくなる(一時的)
頭痛発作
- こめかみ・目の奥のズキズキ・ドクドクした拍動性の痛み(両側の可能性あり)
- 動くと悪化する(階段の上り下りでズキズキ増強)
- 吐き気・嘔吐を伴う
- 光過敏(ひかりかびん):明るい光が眩しく感じられ、暗い部屋にいたくなる
- 音過敏(おとかびん):音が苦痛に感じる
- 持続時間:4〜72時間
緊張型頭痛の特徴
- 頭全体が帽子をかぶったように「締めつけられる」「圧迫される」感じ
- 後頭部から首・肩にかけての重い痛み
- 非拍動性(ズキズキしない、どちらかというと鈍痛)
- 吐き気はほとんどなく、動いても悪化しない
- 日中〜夕方にかけて悪化することが多い
- 持続時間:30分〜数日間
4. 一般的な治療方法
片頭痛の治療
急性期治療(頭痛が起きたときの治療)
- トリプタン製剤(スマトリプタン・リザトリプタンなど):片頭痛の特効薬。三叉神経血管の炎症を抑え、血管収縮作用を持つ。早めの服用が効果的
- NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど):中等度以下の片頭痛に有効
- 制吐薬(せいとやく):吐き気を伴う場合に使用
予防療法(頭痛の頻度を減らす治療)
- β遮断薬(プロプラノロール等):心拍数を下げ、片頭痛の予防に有効
- カルシウム拮抗薬(ロメリジン等)
- 抗てんかん薬(バルプロ酸・トピラマートなど)
- 抗CGRP抗体薬(新薬):エレヌマブ(アイモビーグ®)・フレマネズマブ(アジョビ®)など。月1回の注射で片頭痛発作を大幅に減少させる。慢性片頭痛に特に有効な最新治療。最近では内服薬も出てきています。
- 抗うつ薬(アミトリプチリン等):月経関連片頭痛・慢性化した場合
緊張型頭痛の治療
- NSAIDs・アセトアミノフェン:急性期の鎮痛
- 筋弛緩薬:筋肉の緊張緩和
- 抗うつ薬(アミトリプチリン等):慢性化・頻度が高い場合
- 非薬物療法:ストレッチ、温熱療法、姿勢改善、ストレスマネジメント、認知行動療法
5. ペインクリニックでの専門治療
大後頭神経ブロック(だいこうとうしんけいブロック)
後頭部(頭の後ろ)を通る「大後頭神経(だいこうとうしんけい)」に局所麻酔薬・ステロイドを注射します。片頭痛・後頭神経痛・緊張型頭痛に有効で、外来で簡単に実施できます。
星状神経節ブロック(せいじょうしんけいせつブロック)
首の付け根にある「星状神経節」への注射です。交感神経の緊張を和らげ、脳血管の血流を改善することで、片頭痛の予防・発作頻度の減少に効果があります。また自律神経(じりつしんけい)を整えることで、頭痛に伴う不眠・のぼせ・イライラの改善も期待できます。
ボトックス(ボツリヌス毒素)注射
額・側頭部・後頭部・首・肩の複数部位に少量のボツリヌス毒素を注射します。慢性片頭痛(月15日以上の頭痛が3か月以上続く場合)に対して保険適用があり、3か月に1回の注射で頭痛発作の頻度を大幅に減少させます。
トリガーポイント注射
頭部・頸部・肩の筋肉に生じたトリガーポイント(圧痛点)に局所麻酔薬を注射し、筋緊張を緩和します。緊張型頭痛・頸椎由来の頭痛に特に有効です。
薬物乱用頭痛(MOH)からの離脱サポート
市販薬の過剰使用による「薬物乱用頭痛」に対して、鎮痛薬の適切な減薬・離脱指導を行います。神経ブロックを活用しながら、薬に頼らない頭痛管理への移行をサポートします。
当クリニックでの治療の流れ
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1
初診:頭痛の詳細な問診
頭痛ダイアリーの記載をお願いすることがあります
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2
頭痛の種類の診断・重篤疾患の除外
必要時は連携施設でMRI等を実施
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3
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4
神経ブロック療法の開始
大後頭神経ブロック・星状神経節ブロックなど
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5
生活指導・頭痛日記の活用による頭痛管理
| 参考文献: |
本頭痛学会 頭痛診療ガイドライン2021 / Silberstein SD. NEJM 2004 / Dodick DW. NEJM 2018 / Diener HC et al. Lancet Neurol 2019 / ボツリヌス毒素片頭痛治療ガイドライン ほか |
後頭神経痛
1. 後頭神経痛とは?
後頭神経痛(こうとうしんけいつう)とは、後頭部(頭の後ろ側)から頭頂部・耳の後ろにかけて分布する大後頭神経・小後頭神経・大耳介神経が刺激・圧迫されることで生じる、電撃的・針で刺すような発作性の痛みを特徴とする神経痛です。
「後頭部から頭頂にビリビリ電気が走る」「頭の後ろを針で刺される」と表現される方が多く、片頭痛や緊張型頭痛と混同されやすい疾患です。適切に診断・治療されれば、神経ブロックで劇的に改善できることも多いです。
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大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経、C2神経根、後頭部痛、電撃痛、アロディニア(頭皮の過敏)、大後頭神経ブロック、パルス高周波法(PRF) |
2. 原因・発症メカニズム
後頭神経の解剖
後頭部の感覚を担う主な神経は3本です。
- 大後頭神経(だいこうとうしんけい):第2頸神経(C2)後枝から分岐。後頭部〜頭頂の広い領域を支配。最もよく関与する神経
- 小後頭神経(しょうこうとうしんけい):頸神経叢(C2〜C3)から分岐。耳介後部・乳様突起部(耳の後ろの骨の出っ張り)を支配
- 大耳介神経(だいじかいしんけい):頸神経叢から分岐。耳・顎の角の部分の感覚を担う
主な原因
① 筋肉・筋膜による神経の絞扼(締めつけ)<最も多い原因>
後頭部・頸部の筋肉(後頭筋・僧帽筋・半棘筋など)が過緊張・短縮することで、筋肉の間を走る大後頭神経が締めつけられ、継続的に刺激されます。長時間のデスクワーク・スマートフォン使用・不良姿勢が主な誘因です。
② 頸椎の変性・椎間板ヘルニア
頸椎の加齢変化・椎間板ヘルニア・骨棘(こつきょく:骨のとげ)による第1〜3頸椎(C1〜C3)神経根への圧迫が後頭神経痛を引き起こすことがあります。
③ その他の原因
- 頸部外傷後(むち打ち症・転倒・スポーツ外傷)
- 糖尿病・帯状疱疹ウイルスによる神経障害
- 腫瘍・血管奇形による神経圧迫(まれ)
- 原因不明の「特発性(とくはつせい)後頭神経痛」も多い
3. 症状の特徴
- 後頭部から頭頂・側頭部への電撃的・刺すような発作性の痛み(片側に多い)
- 頭皮に触れると痛む(アロディニア):髪をとかすだけで激痛・枕が当たるだけで痛い
- 後頭骨の下縁(首と後頭部の境目)を押すと圧痛と痛みが誘発される(診断の重要所見)
- 発作と発作の間にも鈍い持続痛・重だるさが残ることがある
- 眼の奥・こめかみへの痛みの放散を伴うことがある
他の頭痛との違い
- 後頭神経痛:後頭部に限局した電撃的・発作性の痛み。後頭部の圧痛点で誘発。局所麻酔薬のブロックで注射直後に消える
- 片頭痛:こめかみの拍動性ズキズキ痛。吐き気・光過敏・音過敏を伴う。4〜72時間続く
- 緊張型頭痛:頭全体を締めつける鈍い重さ。明確な電撃痛はない
⚠️「これまでに経験したことがない激しい頭痛が突然起きた」場合は、くも膜下出血などの命に関わる疾患の可能性があります。
直ちに救急受診してください。
4. 一般的な治療方法
- NSAIDs(消炎鎮痛薬):発作時・急性期の鎮痛
- プレガバリン(リリカ®)・ガバペンチン:電撃痛・ビリビリした神経障害性疼痛の緩和
- 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン等):慢性化・繰り返す場合の予防的使用
- 筋弛緩薬(エペリゾン等):後頭部・頸部の筋緊張を緩和し神経への絞扼を軽減
生活改善
- 長時間のうつむき姿勢(スマートフォン・デスクワーク)の回避
- 定期的な頸部・後頭部のストレッチ(1時間に1回が目安)
- 枕の高さ・素材の見直し(首の自然なカーブを保てる高さに)
5. ペインクリニックでの専門治療
大後頭神経ブロック(第一選択治療)
後頭骨の下縁にある大後頭神経の走行部位に、局所麻酔薬(とステロイド)を直接注射します。外来にて数分で実施でき、多くの場合注射直後に後頭部の痛みが劇的に消える効果があります。診断的ブロック(注射で痛みが消えれば原因神経を確定)としても活用します。週1〜2回を数週間繰り返すことで長期的な改善が得られる方も多いです。
小後頭神経ブロック・大耳介神経ブロック
耳の後ろ・乳様突起付近への注射です。大後頭神経ブロックと組み合わせることで後頭部全体をカバーできます。
頸部神経根ブロック(C2・C3)
頸椎由来の後頭神経痛に対し、原因の神経根(C2・C3)に直接薬を注射します。超音波またはX線透視ガイド下で安全・精密に実施します。
パルス高周波法(PRF)
難治例に対して大後頭神経または第2頸神経節にパルス高周波電流を照射します。
神経を傷つけずに痛みの伝達を数か月〜1年以上抑制できます(個人差あり)。
当クリニックでの治療の流れ
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1
初診:問診・後頭部の圧痛点の確認・神経学的診察
頸椎疾患が疑われる場合は連携施設でMRI撮影
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2
大後頭神経ブロック(診断的&治療的)の実施
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3
薬物療法の調整
プレガバリン・筋弛緩薬・抗うつ薬等
-
4
生活指導・頸部ストレッチの個別処方
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5
難治例:C2・C3神経根ブロック、パルス高周波法の検討
| 参考文献: |
Headache Classification Committee (ICHD-3) 2018 / Blumenfeld A et al. Cephalalgia 2013 / Vanelderen P et al. Pain Pract 2010 / 日本頭痛学会 頭痛診療ガイドライン2021 ほか |